台北郊外と台北植物園の野鳥たち
2015年12月初旬に台北・金門島の野鳥を見るツアーに参加してたくさんの野鳥と出会うことができました。ここではツアー中に撮影できた写真を順次ご紹介します。まずは台北の郊外で会えた珍鳥です。
珍鳥のノドグロツグミが最初の出会い
飛行機が台北空港に到着するとすぐさま鳥見機材を準備してマイクロバスで台北郊外にやって来ているという珍鳥、ノドグロツグミ((英名;Dark-throated Thrush、体長 25p)を最初に見に行くことになりました。公園らしきところでバスを下りると、すでに情報を聞きつけて珍鳥を見に来た20人ほどのカメラマンやらバードウォッチャ〜が一羽のノドグロツグミがエサを食べている大木の周りを取り囲んでいました。台湾でもバードウォッチングがかなり盛んな様子です。
ノドグロツグミはシベリヤ、中央アジア方面で繁殖して、東南アジアや中国西部で越冬します。日本では迷鳥としてまれにやってくることがあるようです。台北でもとても珍しいとのことです。
この個体は胸の色が赤茶色に見えます。亜種のノドアカツグミ(Red-throated Thrush)かもしれません。
まだ居残っている一羽のソデグロヅル
ソデグロヅル(英名;Siberian White Crane、体長 135p)は世界的にも数の少ない野鳥です。シベリア北部などで繁殖し冬は中国西部やインドの北部方面で越冬します。台北郊外の池には何羽か立ち寄った内の一羽がまだ居残っているとのことで会いに行きました。日本ではソデグロヅルは冬期にまれな迷鳥として見られることがあるようです。
ソデグロヅルがいる魚の養殖や蓮の栽培用の池のある周辺の風景です。中央部の白い後ろ姿がソデグロヅルですが、羽をたたんでいるときは真っ白にしか見えません。翼の先の方が黒色なのですが、この日は翼を広げてはくれませんでした。
ソデグロヅルは顔の部分の肌が羽毛がないため赤色をしています。植物の根や茎がソデグロヅルのとても好きな食べ物です。
どうやら好物の蓮根か何かの茎根を掘り出したようです。ここなら越冬するのにも食物には困らなそうですね。拡大したこの写真でソデグロヅルのお尻の部分に黒い羽がほんの少し覗いているのが見えています。
たくさんの野鳥が集まる台北植物園
台北郊外でいきなり予定外の珍鳥を見た後は、この日の夕方と翌朝の早朝の2回、台北植物園を訪れて野鳥を探索しました。公園内には多くの人たちが散歩や運動をしに来ていていろんな野鳥が見られるのかなと少し心配になります。しかし、園内で目を凝らすと木の上や生け垣の陰、藪の中にはいろいろな種類の野鳥たちが人々とうまく距離を取りながら暮らしていました。
迎えてくれたタイワンオナガ
夕暮れの迫る台北植物園で迎えてくれたのはタイワンオナガ(英名;Grey Treepie、体長 36cm)でした。タイワンオナガはカラス科の鳥でタイワン固有の亜種です。
台湾の固有種、ゴシキドリ
首と胸の間の赤色の帯がトレードマークのゴシキドリ(英名;Taiwan Barbet、体長20p)は台湾の固有の鳥です。台湾全島の山麓帯や丘陵帯に多く生息しています。
木の葉と同じ緑色の体はすぐ近くにいてもよほど注意して探さないと見逃してしまうほどです。
まだ夜が明け始めたばかりの園内にある巣箱から顔を出したゴシキドリです。巣の中のごみをくわえて捨てに行こうとしています。台北植物園ではゴシキドリは大切に保護され、多くの人に暖かく見守られているようです。
台湾の国鳥、ヤマムスメ
台湾の国鳥ともいわれているヤマムスメ(英名;CFormosan Magpie、体長 64p)は亜熱帯林から暖帯林にかけて生息する森林性の鳥です。観察するためには普通は山地に行かないと見られない鳥で、台北のような平地に現れるのはとても珍しいとのことです。今回は幸運にも台北植物園内をあちこち飛び回って採餌する群れの姿をじっくりとみることができました。
嘴と脚は鮮やかな朱赤色、白と濃い青の横の縞模様の尾羽が美しいカラス科の鳥です。
カラスと同様に雑食性で昆虫や果物、木の実、そのほか食べられるものはなんでも食べます。
樹上で一休みするヤマムスメの家族です。
さえずりの美しいシロガシラ
遠くまでよく通る声でチョピッチュ、チョピッチュとさえずるシロガシラ(英名;Light-vented Bulbul、体長 19p)。群れで飛び回って木の実や昆虫類を食べます。なかなかじっとしてくれない鳥です。
シロガシラは台湾の西海岸の都市公園や庭園などで普通に見られるヒヨドリ科の鳥で、中国南西部にも多数生息しています。日本では南西諸島だけに住んでいます。
タイワンオオタカに遭遇
探鳥中に樹上で騒ぐ大きな野鳥たちの声に気付いて見上げるとヤマムスメが飛び回っている樹の枝の上に、タイワンオオタカ(英名;Crested Goshawk、体長♂42p、♀48p)が止まっていました。タイワンオオタカは日本のオオタカよりも10センチ弱小さな猛禽です。
このタイワンオオタカは頭頂部に冠羽がないのでまだ幼鳥と思われます。ヤマムスメに狩りの邪魔をされてしまったのか、この後すぐにどこかへ飛び立っていきました。
悠然と採餌するズグロミソゴイ
早朝、園内の草地で食べ物を探しているズグロミソゴイ(英名;Malayan Night Heron、体長 49p)を見つけました。この個体は頭頂の羽色が濃い藍色なのでオスと思われます。
タイワンオオタカが頭上で大声を出したのに驚いて樹上の様子を伺うズグロミソゴイ。
ズグロミソゴイはタイワンオオタカが飛び去ったのを見極めてから、草地に潜むカエルやミミズなどのエサ探しを再開しました。
珍鳥、ダルマエナガに出会う
園内で地元の野鳥愛好家から我々の現地ツアーガイドさんに耳寄りな野鳥情報が提供されました。その場所について行くと、なんと台湾では珍鳥のダルマエナガ(英名;Parrot Bill、体長 12p)が数羽、草藪の中でエサ取りをしながら動き回っていました。
茶色系のファニーフェイスでとてもかわいらしいですね。ダルマエナガはロシア沿海州、中国東部や南部、そして朝鮮半島などで生息しています。台北植物園内で見られるとは本当にラッキーなことでした。
金門島で出会った野鳥たち
ツアー二日目、台北から国内線で金門島に渡りました。金門島は中国本土の間近にある160平方キロほどの小さな島ですが現在も台湾が統治しています。渡り鳥たちが立ち寄ったり、中国本土に住んでいる鳥たちがやってきたりで数多くの野鳥が暮らす島です。今回のツアーでは期待通りさまざまな野鳥に出会いました。これからほぼ出会えた順番にご紹介します。
最初の探鳥地で目の前の木の枝に登場したのはオスのシキチョウ(英名;Oriental Magpie-Robin、体長 21p)です。英名は黒白2色の羽の色がカササギ(Eurasian Magpie)と似ていることに由来していますが、カササギは体長も45pほどと大型で尾羽が長いので区別できます。シキチョウは鳴き声が美しいヒタキ科で鳥です。
シキチョウは台湾、中国南部や東南アジアなどに広く生息しています。
こちらはメスのシキチョウです。
臆病なシロハラクイナ
シロハラクイナ(英名;White-breasted Waterhen、体長 32p)は金門島のあちこちで見かけました。しかし人の気配に気付くとたちまち草陰の中に隠れてしまいなかなか近くからの写真は撮らせてはくれませんでした。台湾や中国大陸南部、東南アジア、日本では南国の沖縄県などに分布しています。
金門島では草地で牛を飼っていますが、そこに牛の糞を食べて暮らしている昆虫類を目当てにいろいろな野鳥が寄ってきます。写真を拡大すると右側の牛の鼻先に二羽のシロハラクイナが採食しているのが判ります。
ご縁が薄かったギンムクドリ
日本では冬鳥として南西諸島の一部にやってくるほか、本州では旅鳥としてごく少数が見られることがあって野鳥写真家たちが大騒ぎするギンムクドリ(英名;Red-billed Starling、体長 24p)。中国南西部に多く生息し、台湾などでは冬鳥として見られる鳥です。金門島ではギンムクドリが数十羽の群れで飛び回っていました。じっくりと撮影したかったのですが、近くで見る機会が少なく今回はその願いは少しだけ叶いました。
黙々と木の実を食べるコイカル
派手に飛び回ることなく黙々と木の実を食べるオスのコイカル(英名;Chinese Grosbeak、体長 19p)見つけました。茂った木の葉に隠れてなかなかシャッターチャンスが来ませんでしたが、やっと姿が見えたところでシャッターを切りました。
中国東北部から朝鮮半島などで繁殖し、台湾や中国南部に越冬しに渡ってきます。日本ではまれな旅鳥として野鳥カメラマンに人気です。雌雄同色のイカルと異なりオスだけが首から頭部がまっ黒で、黒くないメスと識別できます。
金門島では普通の野鳥、ヤツガシラ
日本ではまれにしか見られない珍鳥なのに、この時期の金門島では草地、草の生えた空き地、芝の生えた公園などに普通に見られるヤツガシラ(英名;Eurasian Hoopoe、体長 30p)、蒙古、中国大陸内陸部や朝鮮半島で繁殖し、冬期は中国大陸南部やインドシナ半島などで越冬します。
初めて見るヤツガシラは農地の廃材の置かれた脇の草地で採食していました。夢中でシャッターを切りましたがなんとも背景が芳しくありません。そこでヤツガシラが見られるという公園に移動するとあちこちに何羽ものヤツガシラがのんびりと採食していました。
公園の広場ではヤツガシラたちは人をあまり気にする様子もなく、そっと近づいてしっかりと撮影できました。
二羽のヤツガシラが寄り添うようにエサを探しています。
マミジロタヒバリとの出会い
マミジロタヒバリ(英名;Richard's Pipit、体長 18p)は中国各地で繁殖し、東南アジアやインドなどで越冬する渡り鳥です。ヤツガシラのいた公園の草地で虫を食べていました。
全体的に黄褐色(バフ色)で胸には淡褐色の縦斑が少しありますが、お腹の部分は白っぽく縦斑はありません。日本では西日本方面で渡りの時期に旅鳥として見られます。
こちらは別な公園(エンビタイヨウチョウを見た所)で採餌していたタヒバリ(英名;Water Pipit、体長16p)と思われる個体です。マミジロタヒバリと異なり、全体に灰褐色で胸から腹には縦斑があります。タヒバリは中国東北部から沿海州、カムチャッカなどで繁殖し、日本や中国南東部、台湾などで越冬します。
黒白の首輪帯のあるカノコバト
カノコバト(英名;Spotted Dove、体長30p)は台湾の西海岸、平野部や丘陵帯で普通に見られます。中国南部、東南アジア、インドなどにも広く分布しています。
頸部にある白黒の斑紋が鹿の子模様であることからカノコバトの名前がつけられました。
こちらはベニバト(英名;Red Turtle Dove、体長23p)の大きな群れが草の実を食べているところです。日本では九州方面などに少数が迷鳥としてやってくる珍鳥なのですが、いるところにいるものです。中国、東南アジアからインドなどがベニバトの分布域になっています。
公園を彩るブーゲンビリア、金門島は暖かい気候なんですね。
金門島の海辺にいる野鳥たち
金門島の海辺で出会った野鳥たちをご紹介します。
長大な嘴のダイシャクシギ
ダイシャクシギ(英名;Eurasian Curlew、体長58p)はシベリア西部、バイカル地方などで繁殖し日本、台湾、インドシナ半島、インドなどの海岸部で越冬します。
お洒落なアカアシシギ
アカアシシギ(英名;Common Redshank、体長 28p)は遠くからでも赤色の脚と嘴がよく見えます。
クビワガラスがやってきた
クビワガラス(英名;Collard Crow、体長 48p)が海岸の岩場に舞い降りました。採食にやってきたようです。
クビワガラスは中国南西部に多く生息してして、金門島でも留鳥となっています。台湾本島では珍しい鳥のようです。
ユリカモメの食事場
夕日に照らされた海の上でユリカモメ(英名;Black-headed Gull、体長 40p)がエサ取りにやってきました。
ゆったりと飛び回るオニアジサシ
オニアジサシ(英名;Caspian Tern、体長 53p)は中国東南部などに生息する最大級のアジサシ類で、台湾や日本ではまれな旅鳥です。そのオニアジサシがゆったりとエサを探して飛び回るところをほぼ目線の高さから撮影できて大感激でした。
オニアジサシはウミネコよりも大きく飛んでいる姿はとても迫力があります。
撮影できたのは飛行する姿だけですが、先の部分がちょこっと黒色の赤いくちばしがとても綺麗です。飛んでいるとき脚は見えませんが黒色をしています。
車中から撮ったタイワンキジ
マイクロバスで農道を移動途中に運転手さんがタイワンキジ(英名;Ring-necked Pheasant、体長 70p)を見つけて車を止めてくれました。タイワンキジはとても用心深くて人の姿を見ると逃げてしまうそうです。車窓から、二羽のオスが畑の中で採餌しているところを撮影しました。
オスのタイワンキジは首の白いリングと顔の赤色とが見事なコントラストで大変美しい姿です。ちなみにメスは日本のメスのキジよりもやや淡色の黒褐色と黄土色との斑でまったく目立たない姿です。
夕暮れ迫る沼のナベコウの家族
初日の金門島では多くの珍しい野鳥たちに出会うことができました。この日はさらに台湾や日本ではめったにみられない珍鳥のナベコウ(英名;Black Stork、体長 97p)が暮らす沼を訪ねることができました。
ナベコウはアフリカ大陸南部やユーラシア大陸の中緯度地域で繁殖し、冬期に越冬のためアフリカ大陸中部やユーラシア大陸南部に渡ります。台湾や日本では冬期にごくまれな迷鳥としてやってくることがあります。写真は親子で、右側の羽が赤紫色で嘴や目の周りが赤い方が親鳥、左側の茶褐色の個体は若鳥です。
食事が終わるとナベコウは夕闇の中をねぐらのある沼の奥に飛んでいきました。
暮れかかる沼の中の枯れた立木にカワセミ(英名;Common Kingfisher、体長 17p)が止まっていました。
台湾時間は日本と時差が1時間遅れです。さすがに現地時間で5時近くともなると夕暮れがすぐそこまで近づいてきました。探鳥はまた明日ですね。
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