能登半島で数少ない遠浅の海岸が広がる七尾西湾
五月下旬、能登半島の探鳥地をめぐりつつ舳倉島を訪ねるという探鳥旅行に出かけてきました。真っ先に訪れたのは日本にはいないといわれる珍鳥フー
キエンアオヒタキが来ていた白山市若宮八幡宮の境内でした。すでに珍鳥は去ってしまい姿はありませんでしたがどんな場所なのか様子を見たいと考えました。
若宮八幡宮の境内ではムギマキ(英名;MUgimaki Flycatcher、体長13p)が採餌しているのを見つけました。ムギマキは旅鳥で10月には南の国に渡っていく途中立ち寄った姿を見ることがありましたが5月に逢うのは初めてでした。今はシベリア方面へ渡る途中なのでしょう。
この日見かけたのはメスのムギマキだけでしたが、春に旅の途中の様子を確認できたのは私にとっては収穫でした。
ムギマキと一緒に旅鳥のエゾビタキ(英名;Grey-spotted Flycatcher、体長15p)も同じ境内の林を飛び回っていました。かの珍鳥もこれらの旅鳥に混じって渡る途中この森に迷い込んだのではないでしょうか。
若宮八幡宮の境内で見かけたスズメの巣立ちビナです。この口元を見て親鳥たちが思わずエサを与えるのがよくわかる可愛らしさですね。
のと里山海道 高松付近の海岸線景色です。
田んぼの畔で見かけたケリ
田鶴浜に行く途中の田んぼの畔に一羽のケリ(英名;Grey-headed Lapwing、体長36p)を見つけました。
ケリの近くにハシボソガラスがやってくるとケリはその場にうずくまってハシボソガラスの様子をうかがう不思議な行動(偽傷行動?)をしました。近くに巣でもあるのでしょうか。
ハシボソガラスが飛び去るとケリは立ち上がりました。そこに今度は田んぼを耕すトラクターが近づいてきます。
トラクターがさらに近くに来てもケリは逃げずにくつろいでいてくれました。
輪島港付近での早朝探鳥
輪島に一泊した翌朝早く、付近の公園などを探鳥しました。
公園ではトビの幼鳥がお腹がすいたのでしょうか、盛んに親を呼んで鳴いていました。
河口では魚を食べているトビを見かけました。
葉の茂ったモミジの中をたくさんのメジロ(英名;Japanese White-eye、体長 12p)の群れが採餌しながら飛び回っています。
メジロは動きが速くなかなかシャッターチャンスがやってきません。こちらは枝被りのメジロ君です。
エナガ(英名;Long-tailed Tit、体長 14p)の家族が忙しく採餌中です。素早く動き回るエナガの中でもまぶたの赤い幼鳥はしばらくじっとしていることがあります。
顔立ちの整った幼鳥がちょうどよい横枝に止まってポーズをとってくれました。
垣間見たキジの暮らし
早朝の輪島の田んぼの畔で一ツガイのキジが仲良く採餌しています。
早朝、巣の近くに侵入してきたハシブトガラスと猛然と戦うキジのメス。
共同して侵入者を威嚇するキジのツガイ。
いざ舳倉島へ
舳倉島(へぐらじま)は能登半島の北方50qに位置し面積103ha、標高13m、周囲5qのちいさな島です。春から秋にかけて釣り人やバードウォッチャーのための民宿が営業されています。島との行き来にはへぐら航路株式会社の運行するフェリー「ニューへぐら」号(排水量102トン、定員119名)が天候の良い日に限り一日1往復運航されるのを利用します。舳倉島は特に春と秋の季節は渡り鳥にとって絶好の中継点となっており普段見られない珍鳥も出現することから野鳥愛好家の人気スポットとなっています。
上の写真は輪島港の岸壁に群れるウミネコ(英名;Black-tailed Gull、体長 46p)です。
フェリーから振り返ると輪島港がとてもきれいに見えました。
能登半島が次第に遠ざかっていきます。
舳倉島までの中間点あたりに大島、竜島などいくつかの小さな島が点在しています。
フェリーに乗って舳倉島を目指す90分の航海中時々ウミネコが近づいてきてくれました。
フェリーからはるか遠くの海上で採餌するウミネコの群れ。
海上で暮らすオオミズナギドリ
オオミズナギドリ(英名;Streaked Shearwater、体長49p)たちがフェリーにかなり近づいてきて採餌していました。
オオミズナギドリは太平洋側や日本海側の日本近海でよく見られる海鳥です。羽を広げると幅120pにもなる大型の鳥ですが近くで撮影する機会はそう多くはありません。
オオミズナギドリたちの表情を明瞭に写し取るのはなかなかうまくいきません。
海面をすれすれに飛びながら魚を探すオオミズナギドリ。
乗船して一時間ほどすると前方に平らな舳倉島が見えてきます。
島が近づくと灯台や港の様子がはっきりと見えてきます。
五月の舳倉島で出会った野鳥たち
舳倉島では民宿に二泊しました。その間に出会った野鳥たちを順次ご紹介します。上の写真は磯の岩礁でくつろぐウミネコの群れです。
舳倉島でも見かけたムギマキ(♀)です。
エゾビタキも来てます。
舳倉島は徒歩で一時間もあれば一周することができます。その間散策路は海岸から平原そして木々の生い茂った林と目まぐるしく変わっていきます。
この海岸の岩場には旅鳥のキアシシギ(英名;Grey-tailed Tattler、体長 25p)が採餌していました。
おなじみのハクセキレイ(英名;White Wagtail、体長 21p)もいます。
水辺にやってきた旅鳥のマミチャジナイ(英名;Eyebrowed Thrush、体長 22p)。
島内の林ではたくさんのムシクイ類が群れながら葉の茂った枝の間を飛び回りながら採餌しています。ムシクイ類の判別はその鳴き声が一番有力ですが、ここではほとんど鳴かないので種類がわかりません。この場では彼らはメボソムシクイ(英名;Japanese Leaf Warbler、体長 13p)と仮定しておきます。
撮影時の鳥の姿勢、光線の条件も様々で図鑑の写真との比較でもムシクイ類の判別は大変むつかしいものです。
こちらはアマサギ(英名;Cattle Egret、体長 50p)、コサギよりも10pほど小さく嘴が黄色、夏羽は頭から背中が橙色で識別しやすい鳥です。
岩場を見上げているアマサギ。この後、上のほうにそろって飛んでいきました。
水場にやってきたメスのオオルリ(英名;Blue-and-white Flycatcher、体長 16cm)が水浴びを始めました。
島内のあちこちでカワラヒワ(英名;Oriental Greenfinch、体長 15p)を見かけます。生活しやすい環境が整っているのでしょう。
民宿の前の草地でハシブトガラス(英名;Large-billed Crow、体長 57p)が仲良く採餌してます。長年一緒に暮らしているツガイなのでしょうか。
木陰から突然飛び出したコムクドリ(英名;Chestnut-cheeked Starling、体長 19p ♂)。
島のあちこちでウグイス(英名;Japanese Bush Warbler、体長 14-16p)のさえずりが聞こえてきます。しかし姿を近くで見ることはめったにありません。
島の内陸部に設けられたお立ち台にやってきたキビタキ(英名;Narcissus Flycatcher、体長 14p ♀)。
にぎやかなアオジ(英名;Black-faced Bunting、体長 16p)のさえずりがあちこちから聞こえてきます。メスを誘っているのかなわばりを宣言しているのか、多数が繁殖しているようです。
島の一角でオオヨシキリ(英名;Oriental Reed Warbker、体長 18p)もギョギョシギョギョシギョシギョシとさえずっていました。
海岸端の岩の上から獲物を探すハヤブサ(英名;Peragrine Falcon、体長 ♂42p ♀46p)
灯台の裏手で休むハヤブサの幼鳥、このあたりから巣立ったようです。
海岸の打ち寄せられた海草の上にいるムナグロ(英名;Pacific Golden Plover、体長 24p)を見つけました。
夏羽のムナグロが黒い岩や赤茶の海草ときれいなコントラストを醸し出しています。
舳倉島で見た珍鳥
迷鳥としてまれに見られるイナバビタキ(英名;Isabelline Wheatear、体長 16p)が海岸の岩場に来ているとの情報をいただき探してみるとそれらしい鳥を見つけました。長旅をしてこの島に着いたらしくどこかみすぼらしい感じのイナバビタキです。
二日後に再会したイナバビタキ。あまり様子に変化はなく疲れた様子に見えました。
今度どこかで会う時は元気な姿を見たいものです。
一目見ることができたチゴモズ
非常に数少ない夏鳥のチゴモズ(英名;Tiger Shrike、体長 18p)がいるとの話しで、目撃情報の有ったあたりで目を凝らしていると、スス竹の藪からほんの一瞬見慣れない鳥が現れました。頭頂部が灰色で太く黒色の過眼線が特徴のチゴモズのオスです。
もう少し近くで撮影したかったのですが、姿を現したのはこの一回だけでした。
オオシシウドの花の林で出会ったアカモズ
オオシシウドの花が一面に咲き誇る草原の小道をそっと進んでいくと目の前に現れたのはなんとアカモズ(英名;Browm Shrike、体長 20p)です。
オオシシウドの林の中に営巣している様子で、虫を捕まえてきてこちらを警戒しながらどこかに消えていきます。
こんなきれいな場所でアカモズに出会えるとは、なんだかとても幸せな気分に浸ることができました。
瞬間の出会いだったカラスバト
チゴモズを探して林のほうに目を凝らしているときでした。そこに大きめの黒い鳥が飛び込んできて一瞬枯れ枝に止まりました。それはこの季節によく観察されるカラスバト(英名;Japanese Wood Pigeon、体長 40p)でした。急いでカメラのピントを合わせてシャッターを切りましたが、次の瞬間にはさっと飛び去ってしまいました。カラスバトはとても警戒心が強いため撮影がむつかしい鳥の一つです。
舳倉島にやってきたトケン類
舳倉島の民宿で夕食を済ませた後部屋でくつろいでいると窓の外で「カッコウ」と鳴き声がしました。そっと窓を開けて窓のわきの木の上のほうを見上げるとなんとそこにはカッコウ(英名;Common Cuckoo、体長 35p)が止まっていました。
(参考;トケン「杜鵑」はホトトギスのことで、トケン類とはカッコウ科の仲間を指す古い言い方です。)
翌朝出会ったこの黒っぽい鳥もその特徴からセグロカッコウではなくカッコウということで落着しました。
カッコウはイタドリなどがたくさん生い茂っている草原をしばらくひらひらと舞うようにとびまわっていました。
木柵の上から草地に降りては何かを食べている鳥を見つけました。近寄ってみるとそれは黄色のアイリングが目立つジュウイチ(英名;Rufouse Hawk-Cuckoo、体長 32p)でした。
ジュウイチはひらひらと林の中ほどまで入って行ったり再び草地のほうにやってきたりしてしばらくの間採餌していました。
まだあどけなさの残るその個体はジュウイチの若鳥のようです。
最後にちらりと姿を見せたのはツツドリ(英名;Oriental Cuckoo、体長 32p)赤茶色の虹彩が特徴です。
ホトトギスは見られませんでしたが五月の舳倉島にはトケン類三種がやってきていました。この時期カッコウ科の仲間がここを中継点として北国に渡って行くことがよくわかりました。
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